1月ほど前にとても地味なCypherのAustru IEMを購入しました。
異様な価格につられて
Mixの直販であまりにも安価で投げ売られている所に遭遇してしまい、一度試聴した時に地味ながら好感だったことから勢いで飛びついた。
国内価格が15万弱、メーカー直でも800ドル。そんな中、在庫処分と銘打って(保証が短期間になるとはいえ)新品が6万で売られているというのは…
6万でも十分高価なんだけど、通常価格とは一体なんなのか…?
変わり種ギミックがある
まず他の機種と違う点として、低音切替のスイッチがある。
正直、これはあってもなくてもいい機能だなぁと思った。
聞くジャンルにもよるのだろうけど、差異がとても小さい。
スイッチが立ってる状態が低音多のモードだと思うけど、これが正解かどうかすら全然自信が持てない。
この機能について実感できるような曲でおすすめがあれば教えてほしいです。
そこで単に音の話
結論だけ言うと、これが結構、なかなかいいです。
俺はMentor V2を去年から常用していて一種基準になっているので、両者のキャラクターの違いで話す。
Mentor V2の傾向
一般的には、キレがよくてクリア、中域に艶、低音に弾力があるなんて表現をされる。
俺はそのどれも正解だと思う。そこに加えて表現するなら、音の輪郭や重なりのメリハリをしっかり感じられる機種だということが言える。
逆に、やわらかに広がっていく感じや広さの表現、余韻とか残響みたいなものについては得意な機種だとは感じられない。
すっと立ち上がってすっと音が消える。音について「速さ」と言われるものってこういうことなのかなぁと感じる。
Austruの傾向
まず空間が広く感じられる。
これはIE800やTf10を長く使ってきた結果、Mentorに若干の狭さを感じてしまう俺がそう思うのだから広いと思う。
音の傾向としてはドライかつ若干ウォームな印象を受ける。こざっぱりとしつつ刺激は抑えてちょっとまろやか。
これはクリアさを損なうようなものではなく、見通しはいい。
低音はMentorのように形あるタイプではなく、自然で柔らかに広がる。これも空間の広さに寄与しているのかもね。
特に根拠があるわけではなく、ただの感想だけど、低音を担当しているらしいDDが一部中音域まで出てきているような印象を受ける。
全体のまとまりでいうと、小奇麗なんだけどMentorのような特色には欠けていて、あんまり面白くはない。
反面、聞き疲れもしにくいので常用には向くと思う。
音の話ではないけど、筐体が結構馬鹿でかいのでそこはマイナス。
でもMaverickなんかもこんなもんだっけ?
両者のキャラクターと使い分け
キレとメリハリを求めるならMentorが合うし、音の輪郭を必要としないふわっとした音楽(例えばMatryoshkaのような)を聞くならAustruが合う。
輪郭のある音とない音が混じったような音楽なら、両機種で表情が変わるのでそれはそれで面白い。
音ひとつひとつを集中して聞くと、鳴っている質そのものはMentorのほうが高いかな、という印象はある。
Austruは分析的に切り分けるのではなく、空気感全体を評価すべき機種だと思う。
でもやっぱり、国内価格は…
15万はちょっと高すぎるんじゃないですかねえ。
本来争うべきはMaverickやOriolusといったドライバ数の近いハイブリッド機じゃないかなと思うんだけど、それらよりなぜだかやや高い。
価格設定が大きく枷になっていると思う。ほんとなんでこの価格なの?
結果として近年選択肢がもりもり増えた高級機の中ではひどく目立たないし、どことなくデザインも野暮ったいから売れ筋には上がらず在庫処分されてしまったんじゃないかな(ちなみに本来はブラックバージョンもあってそっちのほうが格好いい)。
なんとなく、MixはUM以外はあんまり売る気が感じられないなぁって思う。