MUSE HiFi M5 ULTRA / FIIO BTR17 比較感想文

最近 MUSE HiFi M5 ULTRA と FIIO BTR17 という新鋭のBluetoothレシーバー2種を購入したので、使用しての感想文を投げておきます。

この2機種は定価では約35000円(BTR17)と約49000円(M5 ULTRA)と1.4倍ほどの開きがあるものの、フリマでの中古価格は非常に接近しており、31000-33000円程度のレンジで略同等の価格帯として扱われており(2025.3月現在)比較対象として悩ましい存在。
というのもBTR17は人気が加熱して各店の新品在庫が払底していて結果的に中古価格が高く、M5 ULTRAはそもそも定価が高いので若干手を出し難く、BTR17ほどの人気を得ているわけではないという状況がある。逆に考えればM5 ULTRAは(相対的に)安価に入手しやすいオトクな機種といえる状況なのだが、じゃあ実際の音や使用感はどうなのかという部分が皆気になると思う。

スペック比較

M5 ULTRABTR17
発売日2024/11/162024/12/6
販売価格(2025.3)49,900円35,172円
寸法・重量約18×62×100mm
約160g
約16.3×41.2×86.6mm
約73.4g
対応コーデックAAC/SBC/aptX/aptX Adaptive/LDACAAC/SBC/aptX/aptX Adaptive/
aptXLossless/aptX HD/LDAC
入力BT/USBBT/USB
出力3.5mm/4.4mmバランス3.5mm/4.4mmバランス
DACES9038Q2MカスタムES9069Q×2
AMPJAN6418(VT:真空管モード)
不明(TM:トランジスタモード)
切り替え可能
THX AAA-788+
BT ChipQCC5125QCC5181
バッテリー3000mAh1200mAh
有線接続PC / スマホPC / スマホ / ゲーム機
専用アプリ

スペックから読み取れる両機の違いとして顕著なのは「サイズ」「真空管搭載の有無」「アプリの有無」。その他言えることを簡単に書くと、M5 ULTRA はチップ構成については比較的保守的(枯れた)なものであるのに対してBTR17は新しめのものを搭載している。
バッテリーはスペックは大差があるが、実使用ではややこしい事情がある(後述)。

使用感や操作性など

まずスペック上からも読み取れる通り、M5 ULTRAのほうが圧倒的に大きく小さめスマホ並の質量となっている。対してBTR17は半分以下の重量であり寸法も小さい。大きなBTレシーバーというのはかなり微妙な存在で、大きいのであればDAPでいいんじゃない(そのほうが結局音も良いし)となってしまうのだが、M5 ULTRAはなんとか上着のポケットに無理なく入るサイズなのでギリギリセーフといった感じ。
BTR17は軽量コンパクトで印象が非常に良い。ただこれは携帯時の話であり、PC接続で準据え置き機として使用している場合はあまり気にならないポイントで、BTR17の色気のない筐体に対して基盤が丸見えで真空管の光るM5 ULTRAは所有感を高めてくれる点もある。

それよりも問題なのは操作性である。
M5 ULTRAは全ての操作がボタンであり、かつ同じ形のものが並んでいるだけなので、操作性が非常に悪い。ポケットの中で単に音量を上下したいだけなのに誤操作が頻発するので快適とは言い難い。
対してBTR17は音量が回転式のボリュームノブである。
そして、モード変更はスライドスイッチ、その他の曲送りやオンオフがプッシュ式のスイッチと使い分けられていて操作性には圧倒的な快適性がある。ここはさすがは老舗といったところで、成熟度が露骨に違う。
音量が回転式、というのは使用感として非常に重要だと感じていて、直感的操作が可能であること、方向を間違えても瞬時に戻せること、なにより「オーディオ機器を操作している」生々しい感覚が得られる。
高額なDAPのほとんどすべてが回転式のボリュームノブであるのも必然であろう。

バッテリー容量にはスペック上大差があるが、BTレシーバーとしての稼働時間はほぼ同じで、両機とも8時間程度。PC接続で有線DACとして使用した場合、BTR17はバスパワー駆動でほぼ無限だが、M5 ULTRAはバスパワーありでもバッテリーを消費する問題があり、充電ポートを同時に使用しない限りは9時間程度の稼働時間となっている。ただこれは、詳細は後述するが、単に不出来というより、PCモードでは多量の電力消費をしている可能性があり音質面に影響を与えているかもしれない。

入出力はほぼ同じなのだが、M5 ULTRAの4.4mmジャックは品質の低いガリガリといった触感のものが使われていてかなり印象が悪い。BTレシーバーとして使用中、BTR17はアプリからコーデックが選択できるがM5 ULTRAには専用アプリがないため、母機側で選択する必要がある。
基本的に最高音質のLDACが自動選択されるケースは少ないとみえ、aptX Adaptiveになる事が多いように感じられる。LDACは安定性が取り沙汰されることが多いが満員電車でも気になったことはあまりない(両機とも)。

M5 ULTRAは真空管を搭載しているのが売りで、真空管モード(VT)とトランジスタモード(TM)が選択的に使えるのだが、TMには前作のMUSE HIFI M4 でも存在した一部イヤホンやケーブルとの相性問題が存在する。音量の大小とは無関係に、キュルキュルといった感じの無視できないレベルのノイズが常時存在し、不思議なことにこれはTMでのみ起こりVTでは消失する。なので俺はほとんどVTでしか使用していない。

M5 ULTRA 音質面の感想

M5 ULTRAは線が細めでクセもあまりないニュートラルな音質。
意外にもVTとTMの音質傾向には大きな差がない。
他レビュワーの記事では真空管らしい暖かい音とか書いてあるものもあるが、俺の感想としてはそんなことはなくVTでも寒色系でキレがある。音のエッジには若干の柔らかさと耳当たりの良さを感じるが、いわゆるウォームでまったりとした音というわけではない。VTでもTMでもベースとなる音はほぼ同一で、VTだと主に中高音域に余韻・響きが追加されるイメージ。なので、VTであれば中高音域の量感が少しあがり、逆にここを削ぎ落とす感じになるTMであれば見通しがよい音という印象になる。

M5 ULTRAで特徴的なのは、PC有線接続時の音質が随分良く感じられることだろう。
LDACで接続しようともBTと有線接続では差を感じる。
逆に言うと、BT接続時の音質はやや凡庸であり、際立ったものがなく、約5万円という定価であれば俺なら選ばない。
バスパワー駆動にもかかわらずバッテリーのみのBT接続時と稼働時間が大差ない点を考えると、PCモードは音質があがる処理が行われているのかもしれない。またBTR17と違ってBT Chipが古い世代のものを使っていることも理由としては考えられるかもしれない。

BTR17 音質面の感想

BTR17はカッチリ…というか、バキっとした筋肉質な音。
M5 ULTRAと比較すると線が厚く硬く余韻は少ない。メリハリがあって迫力を感じられる明快な音質傾向。
以前からFIIOに親しんでいればすぐ合点がいく、いかにもFIIOらしい音といえる。

M5 ULTRAと比較して面白い点は、こちらはBT接続時と有線接続時で音質があまり変わらない。
厳密には違うとしても、似たような音が出てるなという印象をもつ。
BT Chipの世代が新しいことも関係している可能性がある。
いずれにせよ、どの接続でも近い品質の音を出力できるというのは長所であろう。

別途の給電が要るがデスクトップモードも存在し、出力があがる他、音が雄大になる印象。
確かに音は変わるんだけど、あまり音量をとらない状態だと恩恵は世間で騒がれてるよりは小さいかなと思った。

総評

BTR17は準据え置きもできるBTレシーバーであり、M5 ULTRAはBTレシーバーもできる準据え置き機といった趣で捉えている。この点はサイズ感に現れるメーカーの思惑通りなのかもしれない。

FIIOの音が好きなら利便性も含めてBTR17。
FIIOの硬めの音が好きじゃないならM5 ULTRAに検討の余地がある。

PC接続メインに近い使い方をする場合、追加の電源供給が必要になるとはいえM5 ULTRAのほうが満足度が高いかもしれない。反面、BTR17には老舗ならではの粗の少なさと作り込みの良さがあり、買って失敗だったと思わせることがあまりないだろう。
いずれにせよ両機とも一台で「移動時」「PC接続時」の両方で良い音質を提供できる機器であり、ストリーミングメインになりつつある昨今では状況にとてもマッチした質の良いガジェットである。